書評

『年収90万円で東京ハッピーライフ』を読んだ感想|社会のレールと隠居生活

2021年7月24日

 

 

「好きなことで生きていく」のではなく「イヤなことで死なない」ことに重点を置く著者。週休5日で働き、年収は90万円。東京の多摩地域で月7万円で生活し、自由な時間は読書と散歩を趣味として楽しんでいます。

学校では周りに馴染めず、アルバイトでは叱られることばかりだった生活から、思い立って世界一周旅行、そして現在の東京での隠居生活にいたるまで、著者の生活や考え方が書かれています。世間の評価や社会のレールといった 「普通」「常識」に悩む読者の参考になるでしょう。

 

 

年収90万円で東京ハッピーライフ!?

 

クチン
なんだこのタイトル...東京で年収90万円で生きていける訳ないだろ!

 

本の表紙を見て、こう思った方も多いでしょう。

年収90万円ってことは、月収7万5千円。"世間一般的な" 東京なら家賃だけでなくなりますよね。

ところが著者が暮らすのは、東京西部の多摩地域です。自然豊かな地域で家賃は23区ほど高くないでしょうが、それでも年収90万円での生活がイメージできないですよね。

 

Tatsu04a
著者の1ヶ月の生活費は7万円だそうです

 

著者の1ヶ月の生活費

 

・家賃:2万8千円(駅から徒歩20分以上)

・共益費:1,500円

・固定費(ネット含):1万5千円

・食費:1万円(基本自炊)

・その他(娯楽など):1万 - 1万5千円

★合計:約7万円

 

著者は生活費を安く抑え、なるべく働かなくてもいい生活を実現しています。

週休5日で、週2日は介護の仕事をしているそうです。週休2日じゃないですよ。週休5日です!

この生活を実現するにあたり、以下のことを実践しています。

 

① 物欲を減らす

② 工夫して生活する

③「必要なもの」だけを買う

④ 週に最低何日働けばいいか逆算する

 

「生活費を極力抑えて、必要な分だけ働く」というスタイル、理解はできますが実践するのは難しい。

外食で美味しいものを食べたいし、長期休暇には旅行に行きたいし、流行の服やブランド物だって欲しいし・・・

このような娯楽を極力減らした、ある意味禁欲生活を続ければ可能なのでしょう。週休5日は魅力的ですが、休みだけあってもすることがなさそうですよね。

 

Tatsu04a
ちなみに、著者の趣味は「散歩」「読書」で、お金がかかりません

 

週休5日だと暇な時間が多くなるので、趣味に使う時間が増えます。

そうすると、お金のかかる趣味は難しいので、趣味を選ぶときの基準が必要になりますが、著者なりの基準は下記のとおり。

 

① お金がかからない

② 準備が要らず、身ひとつあればできる

③ 時間や場所を選ばない

④ ひとりでもできること

 

この条件に合う趣味だと、散歩と読書は隠居生活にぴったりですね。

他にも家庭菜園をやってみるとか、色々と試してみるのが大切だと思います。

 

イヤなことで死なない

 

著者は「イヤなことで死なない」ことを重視して生活しています。

それを貫いた結果が東京での隠居生活だっただけで、隠居生活を目標にしていたわけじゃありません。イヤなことを避け続けて行き着いた結果なだけ。

 

大事なことは、自分にとってのベストな生き方を探すこと。周りの評価を気にして生き方を選択してしまうと、ただしんどいだけです。

 

僕たちは家族や会社、学校など何かしらの組織に所属しているので、周りの評価を気にしないのは難しい。

ですが、自分が本当にやりたいことは何なのか、周りを気にせず、自分の心の声に耳を傾けることが大切です。

 

Tatsu04a
社会のレールに沿って生きてきた人ほど、自分の "本当に" やりたいことを見つけるのは難しいと思いますが、この本に興味を持っている方は現状を少しでも変えたいと思っているはずです

 

正解は人それぞれ違いますし、レールに沿った生き方だって、立派な生き方です。

著者はあらゆる生き方を否定しておらず、人それぞれ異なって当たり前と考えています。

自分にとってのベストを探しましょう。

 

理想的な暮らしに見えるけど・・・

 

クチン
せかせかと働くのではなく、必要な分だけ稼ぎ、隠居生活を送るのは憧れるけど、将来のことを考えると不安だな〜

 

正直なところ、この生活を送るためには、それなりの覚悟がないとできないと思います。

 

まず、家庭を持つ、特に子育てをするのは難しい環境になりますよね。年収90万円は自分ひとりで生きていくには良くても、家族を養うことは無理です。

そして、老後の金銭面の不安も残ります。著者は年金の支払いが全額免除なので、必然的に将来受け取れる年金受給額は少なくなります。

著者はお金が本などで稼げれば払うつもりらしいですが、例えば正社員として働いていれば、将来は「厚生年金+国民年金」が受け取れます。

 

著者は「将来を真剣に考えるなら、今を大切に生きることが大切」と述べています。それはその通りですが、貯金や年金などのお金の問題も考えると、踏み切るには相当の勇気が必要ですね。

 

非正規雇用で年収200万円台の僕が感じたこと

 

僕自身、非正規雇用で働き、年収200万円台なので、いわゆる社会のレールから外れています。

 

僕(Tatsu04a)の経歴

理系大学院修士修了 → 大手企業 → 残業や半強制飲み会などが続き、精神を壊し1年で退職 → 日本社会から逃げるようにインドネシア現地就職(非正規雇用)

 

僕自身、正直なことを言うと、著者のような生活に強い憧れがあります。

一度社会のレールから外れた身ですし、2年ちょっとの社会人経験から自分の無能さ・無力さを痛感させられました。

結婚願望もないですし、誰にも迷惑をかけない範囲でのんびり隠居生活を楽しみたいと思っています。

 

Tatsu04a
非正規とはいえ週5日働いている理由は、世間の評価や家族の心配などを考えてしまうからです

 

大手企業を辞めるとき、色々なヒトから色々なコトを言われました。

 

・ボーナスが年2回支給され、残業代がもらえる会社って実は多くない

・安定した会社でそこそこの給料がもらえる会社って貴重だから辞めない方がいい

・結婚したいと思う相手ができた時、大手企業で安定した給料がもらえると相手も安心する

・新卒の見かけの給料は少なく見えるかもしれないが、充実した福利厚生や退職金制度など、将来お金に困ることはないだろうし、後から給料はついてくる

 

でも、大手企業や高収入が良いとされる価値観って、世の中が作り出した幸せ像ではないでしょうか。

その幸せ像は世間一般で言う幸せの考えですよね?それは本当にあなたにとっての幸せと一緒なんでしょうか?

 

もちろん、両親は子どものことが心配なので、子どもをなるべく良い大学に入れて、良い企業で働けるようにアドバイスをするのは当然です。辞めるとなれば引き止めるのも当然。

結婚相手が一部上場企業の大手企業と非正規雇用だと、どちらを選ぶかは明白ですね。社会的評価を高めておくことは、間違いなく大切なことです。

 

クチン
それじゃあ、そのレールから外れた人はどうすればいいの?

 

その悩みを解決する1つの手段として、著者の実現・実践している隠居生活があるのだと思います。

 

隠居生活を実践した人、みんながみんな上手くいくとは思いませんが、新しい生き方や価値観を疑似体験できる貴重な本です。

少なくとも僕の身近では実践している人がいないので、読んでて新鮮な気持ちになって面白いです。色々な考え方がありますね。

 

 

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